ひきこもり美術館

 本とは読み物であると同時に、見て、並べて、さわって楽しむコレクションでもあります。一台の本棚が、我々の住む六畳間を美術館にしてくれるのです。

 なのになぜゴミ屋敷なのか。それは本を畳の上に置きっぱなしにいているからであって、きちんと本棚に並べ、整理さえすれば、本も立派な美術品になり、我々はマイ美術館(六畳間)に本を展示している〝館長〟になるのです。

 よい本棚イコールよい展覧会だと思ってもらいたい。なにを並べ、なにを並べないかが重要。うかつに断捨離なんてしてはだめです。ゴッホやルノワールを捨てるのと同じことです。

 ミニマリストの書いた本に感化され、図書館で借りられる本は持っていなくてもいいと、図書館で借りられない本だけ残しておこうと、そんなこと言って本をごっそり整理した結果、本棚がマンガと実用書ばかりになってしまったブログのおじさんがいたとします。いかがなものでしょうか。

 マイ美術館は、生臭くて文化度の低すぎる、マンガと相続に関する実用書ばかりじゃないですか。

 ほんとうはこうじゃない。俺が好きな文学は図書館で借りられるからここにはないんだなんて言ったところで、六畳間のマンガ太郎である現実に変わりはありません。

 本棚とは精神の鏡なのです。マンガと実用書が己の心を照らし出している。みっともねえとはこういうことですな。

 館長であるという自覚を持って、日々展覧会のために、本を吟味しないといけません。部屋に置ける本は限られています。だからこそ毎日真剣に吟味、駄本は一冊として置くわけにはいかん。駄本よ、すっこんでいたまえ。

 断捨離だの、魔法の片付けだの、そんなものに乗せられてスカスカになってしまった俺美術館の館長として、今は本の仕入れに力を入れているところです。本イコール名画だと思ってもらいたい。古本屋に売ってしまった本も、あれこれ買い直したりもしています。無駄な努力とはこのこと。

 本棚とは自分にとって価値のある本を並べて、ニンマリと眺めるためにあるのですよ。

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