ベルウィックサーガ万歳革命

テレビゲームなんてやっている暇がない。そんふうに心に焦りがある時こそ、あえてやってやろうと、しばらく封印していたベルウィックサーガを再開して、ついにエンディングまでたどり着きました。42歳のおじさんのおじさんがゲーム漬けとは情けない、そんな暇があるなら働けと言われても仕方がないのですが、でもベルウィックサーガをクリアしようと本気で決心したなら、仕事なんか辞めてゲームに専念する必要がある、それくらいの高難易度です。

基本的にファイアーエムブレムの元育ての親、K氏が作ったパクリゲームです。シュミレーションRPGと呼ばれるジャンルのゲームで、ドラゴンクエストと、信長の野望の合戦場面が、合わさったようなゲーム。それらのゲームとの違いは、死んだらお終いで、生き返らないというところです。ドラゴンクエストなら教会で生き返らせることができる、信長の野望なら、負ければ撤退か、相手に捕らえられますが、ファイアーエムブレムシリーズでは、死んで生き返らない、もう二度とそのキャラクターはゲームに出てこない、これがゲームに緊張感を与えるのです。

ファイアーエムブレムが大好きで、最新作の「覚醒」以外はすべてプレイしています。しかも、ほぼノーリセットでやっています。完全ではなく、「ほぼ」なのが、やや弱いところですが、それでもなるべくリセットボタンを押さずにプレイして、エンディングまで行くというのが、私のこのゲームに対する姿勢です。味方が死ぬたびにリセットを押して、また始めからやり直す、そういうプレイヤーがほとんどのなか、私は押したい気持ちをおさえて、どんどん仲間が死んでいく、その悲しみを噛み締めながらプレイするのです。

ファイアーエムブレムではたいてい女性キャラは体力(HP)が低く、死にやすい。だからノーリセットでやろうと思うと、女性キャラはどんどん死んでしまいます。杖をもったかわいい女の子が、斧を持ったザコにあっさりとやられて死にます。ペガサスに乗った美人三姉妹も、出てきて数章進むか進まないかといったところで、矢にあたって死んでいきます。空を飛ぶ、飛行ユニットは弓矢に弱いというのが、このゲームのお約束で、弓矢が当たると、空飛ぶペガサスナイトは、蚊か、それとも風船か、といったあんばいで、ぷすっと墜落、あっけなく死んでしまいます。

でも、こんな風に、仲間が死んでも、そこはゲームの老舗メーカー任天堂、ちゃんとゲームバランスを考えています。章が進むにしたがって、代わりと言ってはなんですが、どんどんと強い仲間が加入してくるのです。だから次へと進むことができます。弱い女性キャラに対して、ダメージに強い体力の高いキャラクターというのは、たいてい斧を持ってヒゲを生やしています。もしくは鎧をまとったジェネラル将軍など。私のノーリセットプレイの成果として、ゲーム終盤になると、主人公のまわりは、ヒゲ、斧、鎧、将軍、老司祭といった面々でかこまれた男塾体制が完成しています。

ファイアーエムブレムシリーズ数々やってきていますが、最終章ではいつも、むさくるしい男達が主人公を囲み、最後の決戦に望みます。私自身は虚弱体質ですが、ゲームの中では大変マッチョなのです。ワープの杖を持った老司祭が、主人公や、鎧武者を敵ボスの目の前に飛ばす。ヒゲ、斧、鎧、将軍が次々敵の本陣にワープし、玉砕覚悟で戦います。ノーリセットでやっていれば、最後はこのパターン以外勝つ方法がないはずです。力押しで敵のボスをやっつけて、主人公で制圧、そしてエンディングです。

しかし今回はベルウィックサーガは、ファイアーエムブレムとは違って、ゲームバランスが悪く、仲間が死んでも、それに変わる強い仲間が加わるということがありません。死んだら味方の軍団が弱くなる、そしてクリアできなくなるという、だめなゲームです。だから仲間が死ぬたびに、リセットボタンを押して、やり直します。そしてまた死ぬ、リセット、やり直し、とを延々と繰り返します。同時ターン制という、将棋のように1ユニットづつを交代で動かしていく方式なのですが、このユニットを動かす順番を間違えただけで、クリアできなくなるという、厳しい難易度で、まさにシュミレーションゲーム版、詰将棋です。

毎章詰将棋をといているようなものです。ベルウィックサーガ最終章がどんなものだったかお話ししましょう。まずこの章では、囚われた仲間から、悪の力に対抗できる唯一の神剣「ヴリトラ」を受け取るというイベントがあるのですが、いざ最終章が始まってみると、囚われているはずの仲間がいない。ただ鎧姿に斧を持った門番と、空の牢屋があるだけです。どうやら神剣を手に入れるのに必要なイベントをやり忘れてしまったようです……、この神剣を手に入れるには順番通りに決められたいくつものイベントを消化していく必要があるのですが、攻略本を読みながらすべてきちんとしたつもりです、きっと人質になっているセオドルはトイレにでも行っているんだろう、そのうち出てくるはず。そう自分に言い聞かせて、スタート、でも何ターン進んでも、牢屋は空のままです。

神剣がなくては、敵の中で一番強い「カオス」という敵を倒すことがすごく難しくなる、辛い。どうしていいかわからないまま、取り敢えずその強い奴の周りにいる敵を一つづつやっつけていくことにしました。毎ターンごとに増援部隊があらわれて、やっつけても敵は減りません。30ターンすぎれば増援は出ないと攻略本にかいてありましたが、嘘です。30ターンすぎても敵の増援部隊は湧いて出てきます。


名もなき強いザコキャラが延々と出てくるのです、武器は使うと傷つき最終的には壊れてしまうという仕様ですから、ザコの援軍と戦っているだけで、武器がどんどんなくなっていきます。最終的に75ターン! かかって最終章をクリアしました。神剣なしでの戦いで勝利するには、やはり人柱が必要で、仲間が2人死にました。でもいいのです。最終ボスよりも、この部下の方が強いのですから。このあとさらに2人ほど人柱として、刺し違えるように仲間が死ぬことで、敵ボスにダメージを与え、なんとか勝利、敵本陣を制圧、クリアして、エンディングとなりしまた。

喜びよりも、ひと仕事終えた、やらなきゃいけないことをやり終えた、そんな安堵感でいっぱいです。このゲームをやろうとするなら、学校も仕事も辞めて、ベルウィックサーガにだけ集中しないととてもクリア出来ません。クリアしなければ歴史の証人になれませんし、ベルウィックサーガの怖ろしさについて語ることも出来ません。やるなら最後まで、すべてを捨ててやるべきです。結局のところ人間の人生というのを考えた時に、ベルウィックサーガをクリアすることより大切なことがあるのだろうか。あるならそれでよし、でも特にやりたいことがない、大切なことが何かわからない、探している、というひとがいるなら、是非ベルウィックサーガをおすすめしたい、やってくれベルウィックサーガ。そしてクリアしたらなら、友よ、共に朝まで語り合おう。

コメント

  1. 傭兵最強の古き良きファイアーエムブレム。
    ベルウィックサーガでは傭兵を雇うのに
    お金が必要という、シビアなシステムです。

  2.  以前にも名人が取り上げてくださったベルウィックサーガ。やってみようと検索したのですが、アマゾンなどに投稿されているレビューを熟読すればするほど畏怖すべきゲームであることが伝わり、「トラキアの10倍難しい」との名人の言葉が真実だと確信して結局は買わずじまいです。
     なさけない、そんなことではだめだ、と言われ続けて幾星霜。
     せめてゲームじゃ負け知らず、といきたいのですが、今やネット全盛の時代。オンラインに対応したゲームなど触れたが最後、自分が中の下にも満たない存在であることがハッキリとわかってしまう。方向の違うリアリティ、というかリアルそのものを味わうことになりました。
     かつて幼年が頭を絞った結果として、最高レベルの勇者2人(オグマとナバール)を敵陣に突入させてクリア、「どうだすげーだろ」と同級生を相手に鼻高々だったころがちょっと懐かしい、そんな昨今のゲーム事情です。

タイトルとURLをコピーしました