ネチネチ物申す
新聞には「中高年ひきこもり」に関する初めての調査となっているが、それは違う。これは全国民の40歳から64歳までの人からランダムに選んだ5000人を対象にアンケートをとった、「生活状況に関する調査」です。ひきこもりを対象にした調査ではない、全国民を対象とした統計調査です。
詳しい内容は、内閣府のサイトで↓。この記事はこのサイトにあるPDFを読んで語るよもやま話であり、愚痴であります。完全に【マニア向け】です。
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/life/h30/pdf-index.html
社民党の支持率と誤差
今回の調査では訪問した5000人のうち、回答した3248人の中の、「47人」がひきこもりでした。1.45パーセント。これは割合としては社民党の支持率みたいなもので、ちょっとしたアンケートの偏りで、0パーセントになったり、2パーセントになってしまうものです。それでも社民党の支持率がだいたいどれくらいか分かるのと同様、ひきこもり人数もだいたいこれくらいかな? という目安にはなる。
問題は、この47人をさらに細かく分類して、データ化していること。”誤差”を考えると、こんな少ない集団を分析して正確なひきこもりの状態を把握することはできない。
統計について
統計の対象は全国民なのに、調べようとしているものはひきこもりの実態。対象と目的が一致していない、これでは確率論に基づいた統計調査はできない。ひきこもりの詳しい実態について調べたかったら、ひきこもりを対象にアンケートを取らないといけない。だとすると内閣府がやっているひきこもり調査はなにかもだめというとになる(!?)。
ひきこもりの定義が変わっていた!
ひっそりと今回からひきこもりの定義が変わっていました。びっくりした。それならもう過去の調査と比較はできないよな、根本的に違うデータを並べて比較しても、参考にもならないどころか、間違った結論を生み出すことになる。内閣府の今回の調査は今までと、対象年齢も違うし、ひきこもりの定義も違う、互換性のない、新データとして扱わないといけない。
ひきこもりの定義を紹介、その前に
広義のひきこもり群の定義とは、
①趣味の用事のときだけ外出する。
②近所のコンビニなどには出かける。
③自室から出るが家から出ない。
④自室からほとんど出ない。
⑤、①は準ひきこもり、②から④は狭義のひきこもり、全部合わせて「広義のひきこもり」、というわけではなく、さらに「ただし〇〇は除く」という感じで、付け足しが加わってようやく広義のひきこもりの定義になる。
今回は何を除くかの部分が変わりました。
ひきこもりの定義の変更点?
★統合失調症の人もひきこもりにカウントするようになった。以前は除外されていた。
★妊娠した人、専業主婦夫、家事手伝いは条件付きで(最近6ヶ月間に家族以外の人とほとんど会話しない人は)ひきこもりにカウントするようになった。以前は妊娠した人、専業主婦夫、家事手伝いは無条件で除外されていた。
★介護をしている人も条件つきで(最近6ヶ月間に家族以外の人とほとんど会話しない人は)ひきこもりにカウントすることになった。
おおまかに言うと、この3つがひきこもり仲間に加わりました(逆に、ときどき家族以外の人と会話する人は脱ひきこもりとなります)。ちょっと除外する対象が変わっただけ、これくらいなら大きな影響はないだろうって思うでしょ、でも元々が1.45パーセント、47人しかいない少さな集団だから、ちょっとした定義の変更が、アンケートの結果に大きな影響を与える。
精神障害について
そもそも精神障害がその第一の理由とは考えられないというのが、社会的ひきこもりの大前提だったはずではなかったのか…。さらに言えば統合失調症だけが精神障害ではない、発達障害は大ブームであります、この辺の定義はあやふやです。
趣味の用事とコンビニ
広義のひきこもりと狭義のひきこもりを分ける、「趣味の用事で外出する」と「近所のコンビニなどには出かける」の違いとはなんなのか? ブックオフにもツタヤにも行くし、ファミリーマートにも行く。そういうところにしか行かないのが、ひきこもりなのです。
くだらない質問が多すぎる
個人のプライバシーに関わるゲスな質問が「生活に関する調査」には多すぎる。これが訪問調査という形でおこなわれるのです。これに協力する人の気が知れない。病気、病名、妊娠、職業、不登校かどうかという個人情報のオンパレードを聞き出す。こんな重要なプライバシーを、内閣府からの委託で来たという、見ず知らずの訪問者にさらけだすのだから、オレオレ詐欺がいつまでもなくならないのも無理はない。こんなにけなげで純粋な国民がたくさんいるのです。
よくしていること、という質問
「ふだん自宅にいるときに、よくしていること」すべてに○をつけろという質問項目があって、その答えのトップは、「テレビを見る」です。2位はインターネット。そんなの調べなくたって分かるぞ! しかもひきこもっている人より、ひきこもってない人のほうがテレビを見ている。
ひきこもり親和群の消滅
内閣府の調査から「ひきこもり親和群」という、ひきこもり予備軍扱いの、偏見に満ちたカテゴリーがなくなりました。これはいいことだ。
まとめ
この調査は、質問が多すぎる。質問は3つ以内にしたまえ。ひきこもりの定義をしっかり決めて、それに当てはまるか、当てはまらないか、それだけ聞けばいいじゃないか。
ざっと内閣府の調査のようなものを読んで気になったところを書きました。大まかにまとめています。もしかしたら間違っている部分もあるかもしれない。その時は後で訂正します。グラッチェ、グラッチェ。
コメント
ひきこもり調査には本当にウンザリします。
本当にそうですよね。いちいち変なところを指摘するのも手間がかかって面倒くさい。
しかもなんの見返りもない。
いつも飄々とされているのに、油断してるとガチな記事を書かれるので名人は侮れませぬ。
我が国の統計はもうボロボロ、全く別の国の話ではないかという気すらしてきます。ごまかしはイヤん。
国の統計がくるっていて、それに基づいて支援が行われるのだから、救われない。