集中できない図書館

 自分の部屋で作業をすることができない。パソコンをつければ、すぐにユーチューブで動画を見てしまう。ブログを書く、原稿を書く、そう決めた時は家を出て、図書館に行くことにしています。ここならネットにつながらないから気をそらすものがない。ネット検索はできないが、本の資料があるので困ることは少ない。

 地元の図書館には社会人席があり、おじさん&お爺さんが優先的に座れます。私はここの愛用者なのです。平日、昼間、社会人、この3つの要素に当てはまるのは、定年を過ぎたおじいさんばかり。社会人席で、私は常に若手で、他の人の平均年齢は60歳くらいです。

 そんなお気に入りの図書館で、原稿を書くぞと決意した私の心を挫く出来事がありました。カツラです。対面に座っているおじさんが、尋常でないカツラを装着していたのです。左のこめかみの部分に、カツラが編みこんであって、そこが不自然なつむじみたいになっている。

 本来ならバーコード頭になるはずの部分を、普通の七三分けに見せるための編みこみ式カツラ、と私は解釈した。だから妙に前髪の七三の部分だけ、つやがある。そこ以外はキューティクルのかけらもない、ぱさぱさの髪です。

 すごく気になる。しかもそのおじさんが、問題集を見ながら、ノートをのぞきこんで、何かを書き込んでいる。机にうつむき加減で、ずっと勉強をしているのです。その頭の角度が絶妙で、私に向かって、「さあどうぞ、私のカツラを見てお笑いください」と挑発しているとしか思えない、実によく見える角度なのです。

 さらにびっくりしたことがあって、このおじさんが席を立ってトイレかどこかに行く時の後ろ姿。後頭部がぽっかりとハゲている。このおじさんは、頭全体がハゲているのに、前髪重視の部分かつらをしていて、頭かくして尻かくさず状態になったいる。これにはしびれた。

 前髪が後退しているハゲはいる、頭のてっぺんがハゲている河童タイプもいる、しかし後頭部だけがハゲている人はいない、いたら病気だ。後頭部に無髪空間がぽっかりあって、その下に襟足の部分がある。

 カツラと麻薬は一緒だと思った。一度、手をだしたら、やめられない。このおじさんも、前髪が寂しくなったので、部分かつらをつけて前髪のボリュームアップしたのだけど、どんどんハゲが進行してこんなになっちゃったのだ。めちゃくちゃなカツラ状態で、資格の勉強をしているおじさん。こんなのがずっと前にいたら、もう何もできない。だから今回は諦めて、早めに切り上げて帰って来た。

 今年こそ形になるものを作り上げたい、そんな目標をかかげて、張り切って図書館に行ったが、だめだった。私の対面はカツラ、そして私の隣に座っていたおじさんは、一桁の引き算のドリルをやっていた。8-3= みたいな問題をずっと解いている。このおじさんは何なんだろう。生涯学習にしては、問題がやさしすぎる。指をおって数えれば解けるレベルの引き算を、ずっと解いている。

 図書館の社会人席には、いろんな人がいる。そして、私もそのいろんな人の一人なのです。図書館に来ては、大学ノートか原稿用紙に、くしゃくしゃと文字を書いている。勉強しているわけでもなく、調べ物をしているわけでもなく、ただ汚い字でノートに何かを書いている。せいぜいブログ、たまに人民新聞、そこに載せる原稿の下書きなのです。思いついた言葉とかを書き留めておく。「慌てる乞食はもらいがすくない」とか、ノートに書き付けている。そんな私を見て、周りの人がどう思っているか想像すると、なんとも申し訳ない気持ちになる。

 他人のことをとやかく言えるような人間ではない、お互い様だ。カツラだっていいじゃないか、その程度で心を揺さぶられて、何も手に付かない自分を反省しておりました。よし、今日も図書館に行くぞ。ウッフーイ、ウッフーイ。

コメント

  1. 認知症のトレーニングだったのか、
    謎が溶けた気がする。
    カツラは難しいというか、
    わがままだよね。
    図書館員の慈悲で
    いさせていただいているのです。
    サクセスもリアップも間違いなく
    一本の髪の毛も生やさないですよ。

  2. カツラもだし、ついつい習慣になってしまって、無駄にお金を遣ってることは多いと思います。
    私も、髪の毛は特に問題ないけど、サクセス育毛トニックをもう何年も使ってます。
    それを、断ち切るには、勇気が要りますね。

  3. YouTubeも普及してなかったころ、一昔前のアニメのレーザーディスクや洋楽目当てに通いつめてました。
    自分も含め、叩けば埃の出そうな人ばかりでしたが、館員の方は目こぼししてくれるんですよねえ……。

  4. 可笑しい。カツラって難しいよね。昔父親が突然カツラ作って、いきなりフサフサになり、誰もが驚いたことを思い出しました。農協にいた同級生が「おじさん、どうしたのよ??」と言ってたもんねぇ。

  5. 私の精神科デイケアでの姿そのものですよ。
    特に、隣の計算おじさんには心から同情します。明らかに周りから変人扱いされている。
    しかも、コミュニケーションスキルもないから、最悪!!!
    たぶん、そのおじさんは認知症予防の脳トレをしていると思う。
    我々の数十年後の姿だな。そう思うと決して笑えないね・・・

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