マクドナルドのアイスコーヒー

 足の手術から3週間以上たちました。抜糸も終わり、風呂もはいれる、靴もはける、平日の昼間に近所をうろうろすることもできる、まずは治ったといっていいでしょう。最初7万8千円と言われていた治療費も、限度額適用制度を使うことで、最終的には5万9千円ですみました。よかった。

 気持ちも軽くなったので、通常モードです、いっちょ断捨離でもするかと、使わないバイクのオイルが捨てることにしました。歩いて30分くらいのことろにあるカー用品店に行き、廃油ポイ捨てBOXを429円で買う。けっこう大きなダンボール箱です、それをさらに大きいビニール袋にいれてもらって店を出ました。

 帰り道、このまま家に戻るのもさみしいので図書館に寄りました。いつもどおり本を読み、いつもどおり空想をする、二時間ほど堪能したのち私は帰路につきました。ああ、どっこいしょ、歩き疲れたわい、と部屋の畳のうえに腰をおろした瞬間、あああ、今日買ってきたもの袋ごと全部図書館に忘れてきてしまった、と気づいたのです。

 今日一日なにをしにいったのか分からない。がっかりしました。前にブログに書いたけれど、私がしょっちゅう図書館に忘れるものはスクーターです。ぴゅーっとスクーターで図書館に行き、スタスタ歩いて帰ってくるというのが、かつちゃんの忘れ物パターンなのです。

 翌日。図書館は月に一度の休館日でした。暗澹とした気持ちになりましたが、気持ちを切り替えて、第二の居場所であるファミリーレストランに向かいました。すると入り口のドアにはり紙がしてあるじゃないですか、「混雑時に食事以外のことをして長時間居すわるのはご遠慮いただきます」と。今からやろうとしていた、ドリンクバーで何時間もねばるという、ひとりフリースペースはやめてください、というお店から私へのお願いなのです。

 さすがにこれではと、場所を変えてマクドナルドに行きました。レジにいくと、そこにある下敷きくらいのメニューがあります。メニューには値段の高いセットは大きな文字で書いてあるけど、100円マックみたいな安いメニューは米粒のような小さい文字でしか書いてない、貧乏で目が悪い私にはよく見えないのです。私は当てずっぽうで「アイスコーヒーをください」といいました。するとサイズがSとMがあると言われたので、Mサイズを頼みました。

 客の回転率をあげるために、マクドナルドがわざと店内のイスやテーブルを居心地の悪くしていることは、みなさんもご存知のことと思います。硬いイスに、まな板のような細いテーブル。その狭い空間にちょこんと着席、まずはひとくち、冷たいアイスコーヒーをちゅーと飲んだのです。

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 「マズい、もう一杯!」、おもわずそう声をあげたくなるほど、アイスコーヒーがまずいのです。私は違いの分からない男ですから、家ではインスタントコーヒーを飲んでいます。そんな私にとって、店で飲むレギュラーコーヒーはたいていおいしいものなのですが、これはマズい。

 マズい飲み物にも需要はあります。青汁もそうだし、ドクターペッパーなんていうのもそうです、いわばすき間産業として、マズい飲み物市場が存在しているのです。でもマクドナルドがその市場に参入していたとは知りませんでした。苦すっぱいアイスコーヒーをマズいと思いつつも、最後までちゅーと飲み干しましたぞ。

 翌々日。今度こそと、図書館に忘れ物を取りに行きました。見覚えのあるビニール袋に入ったポイ捨てBOXが、図書カウンターの後ろに保護されていました。私はそれを受け取り、お礼を言って、逃げるように家に帰ったのです。

 あんなデカイ袋を持って図書館に来て、あんなデカイ袋を置いて帰る、変なおじさんとして、図書館の人に認識されたのだなと思うと、しばらくはあの図書館には行きたくない。

 五月は暑くもなく、寒くもなく、草木も花も生き生きしていて、一年で一番いい季節です。吹く風も気持ちいい。私はスクーターに乗って、遠くの図書館まで行き、本を読んだり、空想したりして過ごしておりますよ。

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