デモクラティック大名(9)

 謙信は勝利寸前でしたが、こうなっては勝ち目はありません。あとはどうやって退却するかということになります。上杉謙信は敵中突破をはかりました。新手の先鋒隊と戦うことをせず、朝から戦い続けで疲れている正面の敵に突撃し、そのまま突き抜けて越後に戻ろうとしたのです。

 その時、歴史が動いた。通り過ぎようとしたその敵の本陣に、当時最高級品であったヤクの毛でフサフサの兜をかぶった男がじっと座っていたからです。ひょっとしたらアイツじゃねえと勘づくと謙信は向きを変え、アル中特有の勢いでフサフサ兜のの男に馬上から刀で切りかかったのです。有名な信玄と謙信の一騎打ちです。

 床几に座り、動かざる信玄は風林火山のうちわで、謙信の刀を受け止めます。酔っ払いは勢いがあるけれども、力がありません。えいやー、カキーン、えいやー、カキーンと信玄はうちわで7度太刀を受け止めたといいます。鎧兜に身をつつんで腰掛けている信玄を馬上から刀で斬りつけるのはちょっと難しかったかもしれない。ただ謙信は敵陣のど真ん中にいましたから、馬から降りるわけにもいきません、だから刀 vsうちわ(軍扇)の一騎打ちが成立したのです。

 そうこうしているうちに武田兵が大将の危機に気づき駆けつけてきます、謙信は刀をおさめて退却します。〈続く〉

 

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