デモクラティック大名(7)

 謙信の車懸りの陣に対して、武田信玄は鶴が翼を広げるように陣を広げ、相手を包み込もうとしました。鶴翼の陣です。でも武田軍は上杉軍に対して人数が少ないのです。武田勢の半分は上杉本陣があった山上にいたからです。そこがもぬけの空と気づき、反転して、先鋒隊は武田本陣めざして引き返しているところですが、山中には上杉軍の伏兵がおり、簡単に戻ってくることはできません。

 こうなると謙信が信玄の首をとるか、その前に武田の先鋒隊が本陣に戻ってくるか、どちらが先かという勝負になります。謙信が攻めて、武田軍が守るのです、でも武田軍にだって勇猛果敢な武将はいます、本陣から打って出て謙信の首を狙い突撃する武将たちもたくさんいました。両軍入り乱れての激闘です。

 その時、信玄はどうしていたか。信玄は山のように動きませんでした。腰を抜かし、すわりしょうべんをもらしながら、本陣にじっと座っていたのです。〈続く〉

 

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