ママン・ダディー・介護

ママン・ダディー・介護

家に親の介護ヘルパーが来るときの、ひきこもり当事者の正しい行動

また川崎事件に関するよもやま話。ニュースの記事によると、親(犯人にとっては伯父と伯母)が介護サービスを受けることになったことで、別の親族がひきこもりのアイツ、居候のアイツがどう反応するかを心配して、相談して結果、なにか(?)を伝えようとメモを渡したとか、渡さないとか、そんなことがあったという。  すでに私のうちでは、要介護5寝たきり老婆ママンのヘルパーが出たり入ったりしています、ひきこもり名人の家ではどのようにしたいるか、前例として、参考までにちょっと書いておきましょう。  介護ヘルパーに関しては、ダディーからの「明日から来るから」の通告だけです。でもこれだけで充分なのです。ヘルパーが何時から...
ママン・ダディー・介護

今日もミミズが泣いている

普段おたけんでいる要介護5の寝たきり老婆ママンですが、ヘルパーさんや友人、ボランティアさんが来た時はおとなしくしております。  つかの間の静寂、心がやすらぎます。そんな静かな勝山家に、誰だか分からぬが(友達なのかボランティアさんなのか?)、どこかのマダムが、童話のような、詩のようなものを朗読してママンに聞かせていました。 「今日もミミズが泣いている」  とシュールなポエムを朗々と読み上げているのです。いったい何なんだろう、なんの本だろう。ひょっとしてマダムが即興で詩を吟じているのでは。しかしママンの部屋をのぞくわけにもいかず、自分の部屋でじっとしておりました。寝たきりになるとこんなものを聞かな...
ママン・ダディー・介護

ママンがいつもニコニコしている!?

狹い団地という構造上、トイレに行くにも、玄関に行くにも、台所を通らないといけません、そういう間取りに我家はなっております。しかし今日はダディーが台所で、介護のケアマネージャーとなにやら長々と話をしていたので、私は自分の部屋でおしっこを我慢しながら、体をくねくねさせて耐え続けなければならないという状況に追い込まれておりました。  早く帰ってくれないかな、と思いつつドアごしに耳をすませていました。そこで思わぬことを聞いたのです。 「勝山さん(ママン)はデイサービスのスタッフには、いつもニコニコしているんですよ」と。   ええええっ。家では朝、昼、夜と鬼の形相ておたけびをあげているのに、家から一歩出...
ママン・ダディー・介護

怖ろしい顔をした老婆がニラみをきかせていた

顔がとがり、目がつり上がった老婆が、台所で車椅子にすわり、私にニラみをきかせていた。誰だか分からなかったが、少し間をおいて、あっ、ママンだと気がついた。  毎日ダディー相手におたけびをあげている、要介護5の寝たきり老婆ママン。もう全身の筋肉はおとろえて、口を思いどうりに動かすこともできず、流動食しかのどを通らない。ダディーが毎回食べるものをミキサーでジュース状にして与えているのです。  私はそんな最近のママンを直視するのに忍びなく、同じ家に住みながら、目をそむけて暮らしていました。そして今日、ひさしぶりにママンを見た、別人のようになっていた、やせて頬の肉が落ちて表情は精悍になり、眼光の鋭さは増...
ママン・ダディー・介護

おたけびママン 【限定公開】

風前の灯。医者によると要介護5寝たきり老婆ママンはもう長くないらしい、今年もつかもたないかといったところだと、老爺ダディーから報告を受けました。  いよいよです。私はママンロスに備えて、自分の心のケアのために、ママンのおたけびをICレコーダーに録音しようと決心しました。  しかしです、どういう訳か、ウガガガアーーー、アーカアーカアーとおたけんでいるママンの声を録音しようと、ひきこもり六畳間を飛び出すと、それまで散々おたけんでいたママンがしーん(死ーん)と静かになるのです。しかたないと部屋に戻ると水を得た魚のように、ウガガガアーーーとまたおたけびが始まるのです。こんな鬼ごっこのようなかけひきが、...
ママン・ダディー・介護

ママン帰る

要介護5寝たきり老婆ママンが退院して家に戻ってきました。てっきり入院経由で特養老人ホームに入るものと思っていたのですが、当たり前のようにするっと帰ってきました。  ママンが入院した直後はおたけびが恋しくなり、ママンロスになっていたのですが、静かな日々が続き、夜もぐっすり眠っているうちに、家に寝たきり要介護5の老婆がいたことなぞ、すっかり忘れておりました。  でもそれも昔のこと。耳をすますと聞こえてきます。すまさなくても聞こえてきます。あはああぁはがぁぁぁーーー。があるがあるらーうるららーー。おたけびの日々が帰ってきました。老婆ママンの退院のお祝いに、本棚の文庫からポエムをひとつ、引用いたしまし...
ママン・ダディー・介護

もう、おたけびは聞こえない

寝たきり要介護5老婆ママンはまだ生きております。ただ本日、検査のために入院しました。  朝起きて台所にいくと妹が来ていて、あれっ早いなと思うと同時に、ああ今日が入院の日かと気づいた。病院に付き添いとしてダディーと二人で行くのでしょう。私は「介護はしない」と宣言している人間なので、何も教えてもらえないのです。でもそれは仕方のないこと。  検査入院するのですが、そのあと特養老人ホームに入る予定なので、実質今日が老婆ママンとの最後のお別れです。もう、おたけびを聞くことはできない。そう思うと急にさみしくなってきました。早くもママンロスです(まだ生きているが)。  私は考えました。このさみしさをやわらげ...
ママン・ダディー・介護

老婆ママン、特養に申し込みました

要介護5寝たきり老婆ママンが、約二週間後に入院することになりました。と言っても突然、病状が悪化したという訳でなく検査のための入院です。  では、なんのために検査するのかというと、特養に入るためです。すでに特養の申し込みをしたと、老爺ダディーから報告を受けました。  特養とはなにか、「特別養護老人ホーム」の略です。原則的には要介護3以上の人しか入れない。常時介護が必要で自宅での生活が困難な人が、日常生活上必要な介護、機能訓練、療養上の世話を受けるための施設です。  やっと当たり前のことが、当たり前におこなわれる日が、勝山家にもやってきました。今まで要介護5の難病持ちの寝たきり老人が施設に入らずに...
ママン・ダディー・介護

またクーデターに失敗

「うがああああっあっあっあーーーーー、うおおおおおおっおっおっ、がっがっーーーーー」、外から帰ってきてドアを開けた瞬間、家の中から首を絞められた猿の叫び声が聞こえてきました、というのは嘘で、いつもの要介護5の寝たきり老婆ママンのおたけびでございます。  こんなにおたけんでも、近所から苦情がこないのは、隣人の慈悲か、それてもあまりの怖ろしさに我が家との一切のかかわりをもたないようにしているのか、それは私には分からないのですが、朝、昼、夜と老婆ママンは気の向くままに力一杯おたけんでおります。  先日、第二回クーデターを企てました(第1回クーデターはこちら)。ママンをデイケアセンターに送り出した、そ...
ママン・ダディー・介護

ふるさと♪

家でおたけびを上げ続けている、寝たきり要介護5の老婆ママンですが、外ヅラだけは良くしたいという見栄は残っているのでしょう、ヘルパーさんが来ている時だけは、礼儀正しくというか、せめて人間らしくと思うのかは分かりませんが、おたけびをあげず、静かにしております。  本日はリハビリの日、と言っても、もはや病状が進み体は動きません。リハビリでは食事をするために必要な口の筋肉を鍛えるのみです。舌を出して上に下へ、右へ左へと動かすというリハビリをします。  リハビリと言うと聞こえはいいのですが、やっていることといえば舌を出して、バカな表情をするという、コメディアンでもやらないような、いないいないばあの顔を次...
ママン・ダディー・介護

VR地獄変

耳栓をぎゅうぎゅう耳につめても、寝たきり要介護5の老婆ママンのおたけびだけは、どういう訳かよく聞こえてきます。周波数のせいなのか、それとも宿命なのか、理由は分からないのですがとにかくよく聞こえてくるのです。  「ふううううーーーっっっ」。黙ることを知らない寝たきり老婆のおたけびが今日もこだまします。つらい。おたけびのせいで部屋にいても集中ができない。文字が頭の中に入って来ないから、本も読めない……と思っていたのですが、、、読めるぞ! 芥川龍之介の『地獄変』ならすいすいと読めるのです。  むしろ以前より小説の世界に入っていける。老婆ママンの断末魔のおたけびが、小説の中の炎熱地獄、業苦に苦しみと重...
ママン・ダディー・介護

かやいいやはああはーーー

「うふーふー」「うえいうえうー」「でいてえー、でいてえー」 これなーんだ? 正解は、朝から晩まで勝山家に響き渡る、寝たきり要介護5老婆ママンのおたけびでした。正解できなった人は幸せですよ。  寝ている時とヘルパーさんが来ている時以外は、基本的にこのようなおたけびが家でこだましております。老婆ママンのおたけび自体は以前からあったんです。が、だんだんインフレ化が進んできて、今ではほぼ一日中、老婆が「おたけんでいる」しだいあります。  なぜ、おたけびなのか。ひとつは、病状が進み舌が自由に動かせず話ができないから。そしてなにより、おたけびをあげると、介護をしている老爺がなんでも言うことを聞いてしまうか...
ママン・ダディー・介護

ヘルパーが来ると、こそこそ隠れる生活

アンネの日記みたいな生活を送っています。  つまりはこうだ、勝山家には要介護5の老婆ママンがいるので、毎日、なにかしらヘルパーだったり、医者だったり、ケアワーカーだったりといった人が、家に訪問介護にやって来る。  ぴんぽーん、と家のチャイムがなる。すると、台所で遅めの朝食(ひとりブランチ)をとっていた、ひきこもりおじさんは、慌てて皿とコップをもって、席をたち、すたたと自分の部屋へ、6畳間へ避難するのです。  じっと耳をすますながら、部屋で過ごす。おっ、ヘルパーが来たな。まだいるな、まだいるな、おやっドアの音がした、帰ったかな、うん声がしない、帰ったぞ、よしと部屋の出てきて、台所で食事をしたり、...
ママン・ダディー・介護

クーデター失敗

老婆ママン(推定74歳)が要介護5の完全寝たきりになってだいぶたつ。私は老婆マンとは、ハブとマングース以上に仲が悪いので、介護はしないと宣言をしており、実際になにもしていません。年老いた老爺ダディがひとりでママンの介護をしているのです。  世間での介護がどういうものか知らないのですが、勝山家では、ママンが介護するダディーに向かい「バカ野郎」「冷酷人間」「尊厳(を傷つけるな)」と叱咤罵倒する、地獄となっております。歴史の授業で習った、白人と黒人奴隷の関係って、きっとこんな感じだったじゃないかなー。  さて、ある日のこと、ダディーからママンの病名が判明したと聞かされました。難病、大脳皮質基底核変性...
ママン・ダディー・介護

【いがみ合い2018】寝たきり老婆 vs ひきこもり

寝たきり要介護5の老婆ママンといがみ合ってしまいました。いまわのきわまで来ている老婆相手にいがみ合える人間もそうそういないでしょう。かわいそう、気の毒と思えば、なかなかクワッとなれるものではありません。  事件の発端はヨドバシカメラにあります。小学生の甥っ子次男坊とヨドバシカメラに買い物にいくことになりました、その時です。寝たきり老婆ママンが、iPadのケースが欲しいと言い出したのです。両手の動かない老婆にもとって、iPadは飾りでしかありませんでしたが、老婆のけなげさに同情し、甥っ子と私はおつかいとして、そのケースを買ってくることになりました。それが悲劇の始まりです。  ヨドバシカメラの売り...