家でおたけびを上げ続けている、寝たきり要介護5の老婆ママンですが、外ヅラだけは良くしたいという見栄は残っているのでしょう、ヘルパーさんが来ている時だけは、礼儀正しくというか、せめて人間らしくと思うのかは分かりませんが、おたけびをあげず、静かにしております。
本日はリハビリの日、と言っても、もはや病状が進み体は動きません。リハビリでは食事をするために必要な口の筋肉を鍛えるのみです。舌を出して上に下へ、右へ左へと動かすというリハビリをします。
リハビリと言うと聞こえはいいのですが、やっていることといえば舌を出して、バカな表情をするという、コメディアンでもやらないような、いないいないばあの顔を次々と繰り広げるのです。これを見栄の塊である老婆ママンが、赤の他人の若いヘルパー相手に、積極的やるずもなく、リハビリは遅々として進みません。
でもそこはプロ。ヘルパーさんも恥ずかしがる老婆の気持ちを察し、すっと別のやり方にきり変えてきました。それじゃあ、大きく口をあけて歌を歌いましょうか、何がいいかなー、ふるさとにしましょう、といって歌い始めるのです。
「うーさーぎおーーいし♪ かーのーやーまーーー♪」
ヘルパーさんの声が勝山家にこだまします、が、肝心の老婆の声は聞こえてきません。
「こーぶーなつーーりし♪ かーのーかーわーーー♪」
ヘルパーさんの独唱が響き渡ります。……うるせえなあ、この家では絶えず誰かが騒いでいる。いたたまれなくなった私は外に出ました。つらい、つらい、うるさくて家にはいられない。そうだ、図書館に行こう、図書館だけが私の居場所だ。歩いている間、ずっと心の中で歌のメロディが流れているのです、それにあわせて私も口ずさみました。
「わーすーれーがーたき♪ ふーるーさーとーー♪」
コメント
おたけびを聞かされるのはつらいですが、
まあ、なんとかやっております。[E:#x1F419]
ふーけゆくー♪ あーきのよー♪
いいですよね。[E:#x1F419]
ふるさとは良い曲ですね。でも、私は旅愁が好きです。
ひょっとしてママンとの生活が辛いのですか?
私の先輩であらせられる勝山さんには
沢山情報提供が欲しい次第です。
ちなみにうちの両親は別居していますが
親父は引きこもり
母親は全身転移の癌ですが、元気そうです。
なんだか勝山さんの生活つらそうで。