コミティアに行ってきた

 コミティアに行ってきました。夕タン先生1年3ヶ月ぶりの新刊「健忘よっち」を手に入れるためです。終了時間ぎりぎりだったので、駅から走り、東京ビッグサイトの中を走り、夕タン先生のブースに着いた時には、おじさんの油汗がどんどん出てきて止まらない状態でしたよ。たいへん努力して手に入れた一冊です。

 私もひきこもり界きっての健忘名人です。自分の部屋でどんなに忘れ物がないか確認しても、いちど靴を履いて家を出ないと、何を忘れているか気づけません。靴をはく→家を出る→何を忘れたか気づく→家に戻る→靴を脱ぐ→自分の部屋に行く。これを二回くらい繰り返さないと、忘れ物がなくなりません。最近は気づくまでに時間がかかるようになり、駐輪場に行き、スクーターに乗ろうと、ヘルメットをすぽっとかぶった瞬間に、ようやく何を忘れていたか気づくといったぼっさり具合です。

 コミティアでは、夕タン先生詣をして、よっちの新刊を手に入れるのが目当てですから、あとは帰るだけです。が、今回は偶然、出口の近くで海外マンガフェスタと題して会場でトークショーがおこなわれていたので、ふと足を止めました。ステージには、ドクロのベレー帽をかぶった老人が……!! なんと、レジェンド男おいどん、松本零士先生じゃないですか。

 ドクロベレー帽界の首領、レイジ・マツモトの前を素通りすなどできません。ドクロのベレー帽に逆らえば、銀河鉄道に轢き殺されるというのはマンガ業界の常識です。裁判の勝ち負けなんぞを度外視しての、槙原敬之との泥仕合は、さらば宇宙戦艦レイジ、そのものでございます。

 私はあふれでる汗をハンケチでふきふきしながら、トークショーを聞くことにしました。ロマン・ユゴーという外国の漫画家と、ドクロベレー帽先生との、戦闘機についての対談トークショーです。レイジは、戦闘機を描くことに関して、そうとうプレッシャーがあったとおっしゃるのです。「マニアが怖れるのはマニア」と。つまり自分と同じ戦闘機マニアに、本物と違うといわれることが、漫画家として、マニアとして、なにより怖ろしいと言うのです。だから乗れる戦闘機には全部乗るし、さわっちゃいけないものだって、さわって描く。ほとんどの飛行機に乗せてもらったし、B-29の照準器をもっているぞと、雄弁に語るのでした。

 実際に見ないと「本物」の画は描けない、それがレイジ・マツモトのマンガ哲学なのです。だから全部見た、そして描いた……、たった一つのものを除いては。そう、レイジが見たくても見れないもの、それがレイジが住んでいる星、地球なのです。あれだけは、写真でしか見たことがないと、無念そうに語り、「片道でいいから、私を火星につれていってくれ」と懇願するのです。銀河鉄道999、宇宙戦艦ヤマト、ハーロックと宇宙を描き続けてきた、レイジ・マツモトの唯一の心残りが、まだ見ぬ地球だったとは。

 火星に連れて行けとアジる老人は見ていて、私もレイジ・マツモトのドクロベレー帽が欲しくなりました。かぶりたい、でもあれはレイジのオリジナルの自家製ベレー帽で売り物ではありません。ドクロがプリントされた、松本零士コラボのハンチング帽はあるのですが、肝心のベレー帽は売ってない。ドクロベレー帽、自作するしかないのかなー。

コメント

  1. 名人がベレー帽を被ると戦場カメラマンになってしまいますよ。

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