一番楽なアルバイト

 最後にアルバイトをしたのが13年前ですから、アルバイトについて話すことすべて、ぷちお爺さんの思い出話です。現代人のやっているアルバイトがどういうものか、それはもう分からない。

 私がやってたなかで最も楽なアルバイトだったのは、警備員(ガードマン)です。赤い棒を振って道路に立っているアレですよ。

 週に三回、三ヶ月くらいやりました。大検(現・高認)に合格したものの、大学受験に失敗して途方にくれていた、25年前のことです。ガードマンこそ元祖、派遣の仕事じゃないですか。警備会社から現場へと派遣される。建築会社は必要だから警備員を雇うのではなくて、法律で決まっているからしかたなく雇っていた。そのせいか暇な現場が多かった。

 唯一の道具である、赤い棒を使う場面はめったにない。たいてい工事現場の入り口に座っている。正月の玄関に飾ってある門松です。トラックが来ると(一日に三回ほど)、はりきって工事現場のシャッターを開け、棒をふりふり、笛をふいて、トラックを誘導する。でも警備員がいちいち誘導しなくても、トラックは問題なく工事現場に入って来るので、たんなる飾りです。

 そのガードマン人生で、一番暇だったミッションが、マンホールの横に座って、変な人が入ってこないように見張る仕事。歩行者に対しては何もしなくていい。作業員が全員、マンホールの中に入ってしまうので、その間工具箱をイスがわりにして、マンホール横で座っていた。日給一万円。 

 ただ座っているのももったいない気がしたので、英単語帳をポケットに入れて、暇な時間を利用して英単語でも覚えようかと思ったのですが、仕事中に仕事以外のことをする罪悪感から気持ちが入らず、単語一つ頭に入ってきません。暇だ、つまんない、帰りたい。八時間ずっと帰ることばかり考えていました。

 大変そうな仕事を避けて、誰でも出来る簡単な仕事を追い求めて出会った、完璧な楽な仕事でしたが、おそろしく「退屈」だった。しかも、工夫して、面白くするとか、やりがいを見つけるといった余地がない。時間が過ぎるのをじっと耐えて待つしかない。退屈で平気でいられる人は、天才だよ。
 


この記事へのコメント

  1. 楽な仕事とは何か、常に
    追い求めております。
    清掃の仕事も誰かがやらなければいけない
    仕事ですが、どうせすぐにまた汚れると思うと
    辛いですよね。

  2. 警備がダメとなると設備か清掃でしょうか?
    でも、どれもしんどそうだな。

  3. 仕事中に仕事以外のことをする罪悪感があるところが、勝山さんのまじめなよいところだという気がします。
    自分も楽なバイトってどんなのがあるんだろうって考えたことがあるので、面白い記事でした。昔の話ということなので、今はまた違う感じなのかもしれませんが・・・。

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