いまさら質疑応答

2020年2月3日_神奈川新聞

 人前で話すときに、私が心がけていることはことは早口にならないようにすることです。プレゼンやスピーチの本を読んでみてください、たいてい早口になってはいかん、と書かれております。だから2/2のたんぽぽ子育て講演会のときも、そのことを強く心がけて話をしておりました。その結果、

「すごく、もっさりしていた」
「おじいさんみたいだ」

 と終わったあとに、言われてしまいました。話し方が遅すぎたのです。

 予定していた話も消化できませんでした。しかたなく質疑応答のコーナーで、ひきこもり生活の極意について話すことになりました。そのせいで質疑応答のコーナーは、質問をもらうだけで、なにも答えないという、そのようなことになってしまったのです。

 ひきこもり6畳間に帰り、ざぶとんの上にあぐらをかき、ひとり反省会をしておりました。このままではいかんと思ってたところ、「ブログで質問に答えてほしい」というメールをもらいました。ここはひとつ、テキパキとした、おじいさんじゃないところを見せる意味でも、ブログで質疑応答をしよう。あの時答えるはずだった質問に、1ヶ月以上たったいま答えていきます。さあ始めますぞ。

 

Q.ゆっくりのお話だったので、よくわかりました。ありがとうございます。収入は本だけですが? ほかには何か収入になることはしていますか?

A.本の収入は、ほとんどないんですよ。時々、電子書籍の印税が、ひょっこり入る程度です。ただ私は障害年金をもらっているので、恥ずかしながら、それが一番の収入となっています。

 

Q.ユニークな講演をありがとうございます。今後の講演の予定はあるのでしょうか?

A.5/30にパルレ学習会で話をします。スピーディーなトークにご期待ください。

 残念ながらコロナの影響で中止になってしまいました。今後の講演の予定はありません。(※2020/04/15 修正

 

Q.生活の保障(お金・扶助)があればひきこもりの問題はある程度解決するように思うのですか、どうでしょうか?

A.解決します。生きることと、お金を稼がぐことを切りすことができたら、もっと人間らしくなれます。働いて稼ぐことが生きる条件だと思わされているから、みんな辛いのです。

 

Q.(不登校の間の)ご家族との関係、友達との関係、外の支援者との関係はどのような感じだったのでしょうか?

A.高校3年になって学校に行かなくなったのですか、家族との関係はというと、家の中ではママンとの全面戦争に突入しました。学校に行け、行かない、といがみ合いが高校を中退するまでずっと続きました。

 無理やり部屋の中に入ろうとするママンと、そうはさせまいとするひきこもり息子との、おしくらまんじゅうは勝山家の歴史のハイライトといえる行事でした。そんまママンも今や寝たきり老人です。
 
 友達との関係ですが、ちゃんと進学したり、就職した友達とは、あわす顔がないので疎遠になりました。大学受験に失敗して浪人したり、ぶらぶらとパチンコやスロットをしている友達とはそのまま付き合いが続きました。すねに傷持つ者同士の絆は強いですね。

 外の支援者というか、高校の担任が家まで来てくれたことがありましたが、ただただ迷惑で、早く帰ってほしいとしか思えませんでした。今ふりかえっても、やっぱり迷惑です。

 

Q.(不登校の間の)1日の流れは、朝~夜までどんな感じだったのでしょうか。

A. 朝は寝て、昼も寝て、夕方くらいに起きていました。大学受験生に擬態して、勉強するふりをしながら、ずっと深夜ラジオを聞いていました。それ以外の時間は本を読んでいました。

 

Q.周囲はどんなサポートをしたらよいと思われますか?(それぞれの時期で)

A.不登校の間は、おこづかいを渡して、放っておいてあげるのがいいと思います。

 立派なひきこもりになったら、親はピースボートに乗って、3ヶ月くらい世界一周旅行にでかけてほしい。

 

Q.ひきこもりの極意を教えてください。

A.働かないことです。死ぬまで求人情報を見ないことです。

 

Q.いま問題になっている“中高年のひきこもり”は“不登校”と関係があるとお考えですか? なにかほかの(学校教育以外の)原因があるとお考えですか。

A.中高年ひきこもりの原因は、中途入社です。一度社会に出た人が、ひきこもり業界に中途採用として入社してくるのが原因です。

 非正規の低賃金保障なしの仕事ばかりですから、本来ならばひきこもらないような、ひきこもる才能のない人までひきこもりになっています、それが今の中高年ひきこもりブームをつくっています。

 

Q.ひきこもりの質を高めるというのは具体的にどういったことですか?

A. ひきこもり状態そのものを快適にしていくことです。カーテンを開け、窓を開け、新鮮な空気を毎日ひきこもり部屋にいれる。晴れた日は布団を干す。そういうこまごましたことを積み重ねると、ぐーんとひきこり生活の質が高まります。

 

Q.家で一番やっていて楽しいことはなんですか?

A.今日はなにしよっかなと考え、なにかしたり、しなかったりしていますが、一番となると、その日、その時の気分によって変わってきます。部屋の中は基本的に楽しいことだらけです。なにかを読んだり、書いたりするは好きです、ネットもゲームも、音楽を聴くのも楽しい。6畳間は桃源郷なんです。

 

Q.「ひきこもりの完成度を高める」という話がありましたが、例えばどのようにQOL(Quality Of Life)を高められるか教えていただけるでしょうか。

A.原付の免許をとること。パソコン・スマホを持つこと。年金免除の申請をする(役所の手続きをちゃんとやる)ことの3つがお薦めです。でもなかなかこれをやらないのが、ひきこもりの特徴でもあります。せめて年金免除の申請だけでも今すぐして欲しいですね。

 

 以上が、2/2の講演会で話せなかった質疑応答の答えです。いまさらで申し訳ありません。次からがんばります。

 

コメント

  1. 質疑応答ありがとうございます。
    働くということと生きるということを切り離すのは、人間らしく生きるための条件ですよね。世間は人間らしく生きたくない人で溢れているようです。

  2. こんにちは。

    「生きることと、お金を稼がぐことを切りすことができたら、もっと人間らしくなれます。働いて稼ぐことが生きる条件だと思わされているから、みんな辛いのです。」

    これは本当に切望しますね。
    生きづらさというか、苦しみというか、殆ど人間関係と労働にあるように感じます。何をするにしても「働かなければならない」という絶望感と言ったら・・・。
    そのせいか不思議と「働く絶望感」がいつも前に出てくる気がします。

    何か欲しいものがあるのだが、働くのが嫌なので諦める。
    将来が不安、でも働くことの方がもっと不安である。
    一切肯定されないニート、引きこもり状態は辛い。とはいえ働いても、働く辛さに置き換わるだけだしなぁ。
    会う人ほぼ全ての人に咎められる、しかし何しろ働くのは嫌だと・・・。

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