千の風になって ひきこもり編

 もう甥っ子とコンビを組んで、五年になります。最近は人見知りのせいか、遊びに来るたびに小芝居が一回入るようになりました。甥っ子が「今日は叔父さんとは遊ばない」と言うのです。しかたなく「ほわちゃ」と甥っ子の横腹に地獄突きをくらわします。身をよじって嫌がり、逃げる甥っ子に、ブルー・スリー仕込みのカンフーチョップを続けざまにおみまいします。「嫌だー」「来ないで!」と逃げ回っているのですが、やがて甥っ子がぴたりと足をとめて小芝居は終了。電車ごっこの始まりです。

 宅急便ごっこ、本屋ごっこ、火災報知機点検ごっことみっちりと甥っ子の空想世界につき合わされます。甥っ子は自分の好きなことだけをやっているので疲れません。叔父さんは疲れますから、早めに甥っ子にゲームをしようと提案することにしています。初代ファミコン、ボードゲーム、百人一首、トランプなど。やはりゲームに限りますなあ。体力的に楽です。

 子供は大人の真似をしたがる。叔父さんは甥っ子にゲームのルールを説明するのですが、それを聞いた甥っ子は「ゲームの説明がしたい」と思うようになります。その思いは叔父さんに向けられ、全く理解できない甥っ子の空想ルールを聞かされる羽目になります。そして甥っ子ルールによる全く意味の分からない、トランプゲームをさせられます。

 でも数ヶ月前から、トランプのルールが分かるようになってくれました。ただ、ババ抜きでジョーカーを引くたびに、悔しがって泣くのです。負けようものなら、「叔父さんのバカ野郎」と言って号泣して怒るものですから、困ると同時に面白くて、いつも泣かしてやります。こんなことを延々とやり続けて、最終的には眠くなった甥っ子がグズって終了になるのですが、まれに機嫌よく最後まで行く時があります。

 「早く、急いで!」と、和室の真ん中に叔父さんを四つんばいにさせます。その上に甥っ子が乗り、新体操の着地のポーズをとります。すごい、すごいとみんなに褒められたところで、今度はおもちゃのマイクを持ってきて、四つんばいになったままの叔父さんの上に乗り「私の~お墓の前で~♪ 泣かないでください~♪」と歌い上げます。みんな大爆笑です。四つんばいでステージの役をこなす叔父さん込みで大爆笑です。5歳の子供がこの歌をうたうと、すべり知らずですね。甥っ子はリサイタルを終え、気持ちよく家に帰ってゆくのです。

 甥っ子が帰った後、相手をしていた叔父さんは死んだように眠ります。好きなことをしている人間は疲れない、怖ろしいことです。Photo

コメント

  1. 5歳の子が歌うはずのない歌をうたうから、面白いのです。
    大人がカラオケで歌うのをまねしたのでしょう。
    やり返す間も無く、一発KO負けです。完敗です。
    ボクは親に厳しく育てられて、こんな立派なひきこもりになりました。
    甥っ子にはできうる限り甘やかして、なにかボクとは違った生き物になればと、楽しみにしています。
    99%は保護者が面倒を見ているのですが、
    1%はボクが教育こと、ちょっかいを出して泣かしてやります。
    なぜそんなに泣くのか、甥っ子に聞いてみたのですが、「分からない」と言われてしまいました。
    ブログ教えてくれてありがとう。
    コメントをつけておきます。

  2. たびたびすみません。
    勝山さんに直接お話した、僕のブログです。皆さん宜しかったら是非ご覧下さい。
    「一日ゼロ善のレッサーモヤイのブログ」
    http://yaplog.jp/lessermoyai/

  3. はじめまして。ずっと以前から拝見させていただいています。甥っ子さんとの睦まじさに、思わず筆をとってしまいました。
    何より健康そうなのが幸いです。勝山さんの教育(?)で甥っ子さんはすくすくと育っていますね。とても微笑ましいです。

  4. 甥っ子少年くんの話題の時にはいつも思うのですが、文面から、少年くんに対する勝山さんの親愛の情が溢れていますね。自分は同世代や年上の人たちはおろか、子供すらも苦手で、全くどう接していいのか分かりません。……というか、子供が一番苦手ですね。全然関わりないところから見ていて、可愛いなと思うことはよくあるのですが。

  5. お久しぶりです。
    僕だったら「私の〜背中の上で〜♪歌わないでください〜♪」とやり返してやりますね。

  6. 5歳で、千の風になってを歌うんですか!
    非常に驚いています。
    5歳と言うと思い出すのが、5歳の子をイメージして作られた映画、崖の上のポニョです。
    僕は、この映画のテーマを聞いてからなぜか耳から離れず、この歌がずっと頭の中に残っています。
    ぽぉ~にょぽにょぽにょさかなのこ!
    う~ん、5歳の子に完全に負けていますね。
    でも、この映画のキャッチフレーズとなっている、生まれてきてよかった。ですが、僕もこんな事一度でいいから思ってみたいと思います。
    僕が守ってあげるからね。ともあるんですが、実は僕はひそかに、僕も守って欲しいと感じているのであります。

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