ひきこもりブッダ十大弟子 便所男ラーフラ編

 甘やかしてはいけない。ひきこもりブッダは自分のことは棚にあげ、弟子たちには厳しく接していました。ブッダの子、羅ご羅ことラーフラも例外ではありません。特別扱いにしては、教団の中に新しい階級ができてしまいます。平等第一のブッダは、「くれぐれも、特別扱いはしないように」とラーフラの後見人である舎利弗(インド名・サーリプッタ)に、そのことを念を押して頼みました。

 「おいこら、ビシビシいくぞ」、鼻息荒く決意するも、知恵と慈悲深いことで知られる舎利弗です。ちっともビシビシなどせず、慈悲オンリーでラーフラに接していました。甘やかしていたのです。増長すること山の如し。ラーフラは、とんでもない嫌な野郎に成長していきます。教団内のモテない男子をバカにし始めたのです。その噂はブッダの元まで伝わりました。

 どういうことだろう、舎利発ほどの高弟子が、しつけもできないとは。ブッダの顔がみるみる不動明王になっていきます。それを見ていた目連ことモッガーナは、「これはいけない」とあわてて親友・舎利弗の元に駆けつけました。

 朋友サーリプッタよ、目覚めた人、尊いお方ブッダがキレかかっているぞ、戸塚ヨットスクールの校長になった気分で接しないといけない、と教え諭しました。知恵第一の舎利弗です、「やべえなあ」とすぐ自分が置かれている状況に気づきました。どうすべきか、あのバカ息子を今すぐ悟らせなければならないのか。教団一の知恵者もさすがに考え込みました。

 人のいい目連は、親友が困っている姿を見て、いても立ってもいられません。私に任せろ、神通力で何とかしてやる、大丈夫だと、舎利弗が止めるのも聞かず、ラーフラのもとへゆきました。そこには女子尼相手にぺちゃくちゃと、異性間の友情は成立するか、と語っている愚か者、仏男子ラーフラがおりました。

 これはいかん。目連はラーフラの元に駆け寄り、ブスはブス、ブサイクはブサイク、友情なんてない、悟りに逃げるしかないんだよと、真実を高らかに説きました。全員どん引きです。しかしモッガーナは、そんなことにはおかまいなしに、ラーフラを無理やり修行場まで連れていきました。

 「今日からここで苦行しなさい、そこの坊宿で暮らすのです。一人でだぞ。ひきこもりはいつでも単独行動。見習い僧はまず孤独に耐えなくてはいけない。マンツーマンで鍛えてやりたいところだが、悟りを開いた僧と、見習い僧が同宿することは、戒律で禁止されているんだ」。目蓮は仏教オリエーテーションを終えると、自分の坊宿に帰って行きました。

 ちっ、なんだよ。ラーフラはふてくされましたが、仕方がありません。腕力に、神通力、教団内で随一の武闘派の目蓮には逆らうわけにもいきません。ラーフラは坊宿の掃除を始め、寝床の準備をすることにしました。すると、しらないハゲのジジイがやって来て、「君は誰だね、この宿の主は私だよ」というのです。目連はうっかり間違えてラーフラを別の坊宿に案内してしまったのです。ラーフラは居場所を失い、野宿するはめになりました。

 教祖ブッダの息子がホームレスになる。ラーフラは、あの野郎、ダディーに告げ口してやるぞと、ドス黒い心を抱きながら、ラーフラは木の下でふて寝をすることに。ブッダに拉致されるまでは、国王として贅沢三昧の暮らしをしていたラーフラにとってこれほど辛いものはありません。それに追い討ちをかけるように、インドの熱帯地方特有の大雨が降り始めました。ああ、どこにいけばいいのでしょうか。見習い僧は、戒律で他の信者との同宿が許されません。目の前に宿はあるのに、宿にはいることができない。居場所がない。雨をしのげる唯一の場所といえば便所くらいです。「いくらなんでも、苦行とはいえほどがある」、ラーフラは眩暈を覚えました。

 その夜、舎利弗と目連は、ラーフラがちゃんと修行できているか、坊宿のある村へ見まわりいきました。しかしそこには、知らないジジイが鎮座しているだけです。目連は卒倒しました。舎利弗の顔もみるみる青ざめていきます。阿呆とはいえ、尊い方の一人息子。すぐに探さなければいけません。

 目連はすぐに、世界を見通す神通力を使いました。現世だけでなく、あの世も見通せる力を目蓮は持っていたのです。しかし、まさかこんなお姿を見るはめになるとは。目蓮が見たのは、薄汚い便所で寝ている、尊い方のご子息でございます。目蓮はもう自分の神通力が嫌になってしまいました。

 便所で寝る、仏男子。その噂はブッダの耳にも届きました。英才教育とは程遠い、肥溜めの境地。ひきこもりブッダは、二度とこのような便所男を教団に出現させてはいけないと、見習いであっても二回までは僧との同宿を認めると、戒律を変えたのでありました。

 

コメント

  1. 息子の専務が、囁きババアをぶっ飛ばそうか
    どうしようか、葛藤している微妙な顔が個人的には好きです。

  2. リンク先動画の囁き女将、かなり面白いですね。
    自分もピンチの時に囁いて欲しいです。
    常に母親同伴で修羅場に臨む、みたいな感じで。

  3. 囁き女将ならぬ、囁き叔父さんです。分からない方は、
    http://www.youtube.com/watch?v=tVm_FkJfuj8
    こちらをどうぞ。ラーフラと便所の結びつきは仏教ファンの常識です。

  4. 扁桃腺が腫れて「大阪・船場吉兆の囁きママン」の様になっておられる中、更新ありがとうございます。
    ブッダの世界にも便所飯男子がいたなんて驚きです。でも、どっちかと言うとひきこもりブッダの方が便所飯がしっくりきますけどね。

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