大丈夫くん

 ひきこもって20周年、私の心のなかにはいつだって希望と夢に満ちた「大丈夫くん」が住んでいます。将来どうするんだ、親が死んだらどうするんだと脅されても、大丈夫くんにはかないません。キープ・オン・ひきこもりです。

 でも心のなかに「現実くん」もいるわけです。わしは現実逃避せんぞ、孤軍奮闘している現実くんがいる。彼がいろいろ精神薬について調べたり、福祉制度、年金、生活保護について徹底的に調べ上げ、研究しているわけです。原発事故であるところの最悪の事態というのを考えて、日々過ごしているのです。

 大丈夫くんは、いつだって願望だけで生きています。だったらいいな、これ一本です。外に出ないで稼げたらいいな、営業みたな仕事はしたくない、そんな願望を握りしめて、アフィリエイトやネット古書店を始めるのです。起業家です。時が経ち、大丈夫くんは挫折し、絶望する。もうお終いだと嘆く。

 「やはり、わしの睨んだ通りだったわい」、現実くんの登場です。ほうれ見たことか。お前の言う、夢や希望ってさ、たんなる不安と怖れの裏返しじゃねえか、と厳しく問い詰めます。松本清張ミステリーに出てくる刑事の取調べと同じ。大丈夫くんを自白させ、反省させるのです。

 しかし大丈夫くんはネバー・ギブアップです。へこたれへん。だから何度でもチャレンジをしては、つまづいて倒れます。大丈夫くんは、これから起こってほしい最高の状態を空想して生きますから、いつもがっかりと無念で過ごします。現実くんは悔しそうにそれを眺めているのですが、どうすることもできません。大丈夫くんと現実くんとのバランスが、ひきこもり具合とひきこもり期間をきめるのです。

コメント

  1. 日本全国、自主的に自宅待機にするれば
    パニックや買占めなんてことは起こらないのですよ。
    ケンチャナヨと韓国のひとはよく言うのですな。
    国をあげての大丈夫くんですね。
    私の心の中の現実くんは押しが弱いので
    いつもは大丈夫くんばかり活躍しています。
    現実くんに言わせれば、就労こそ現実的ではない
    そんなのできるわけがないと申しております。

  2. 「現実くん」の選択肢に「就労」の文字がないところが実にすばらしいですね。「大丈夫くん」にせよ、「現実くん」にせよ、基本は「おっくう」なことはしないということですよね。まずは今日一日ひきこもりライフをたんのうする。明日は明日の風が吹く、です。

  3. 20周年おめでとうございます。
    20年も闘ってこられたのですね…。すごいです。
    私の中では「現実くん」と「真実くん」がたたかっています。
    「現実くん」は人々の都合で左右されるもので、「真実くん」は人の都合と係わりなく存在しているものです。
    金持ちや権力者の最大の武器が「現実くん」で貧乏人や反骨精神のある人の最大の武器が「真実くん」だとも思います。
    私は私の中の「真実くん」を消したくありません。
    「現実くん」しか見ようとしない人が多くて不安になるのですが、勝山さんのように「現実くん」と闘ってらっしゃる方々のおかげで、私の中の「真実くん」は何とか持ちこたえています。
    本当にありがとうございます。

  4. チョナン・カンことツヨポンが「ケンチャナヨ」を連呼している歌を思い出しました。私の勘によれば、チョナンは大丈夫くんのお友達のはずです。

  5. 20周年おめでとうございます。
    今私の中では、なんと現実君が優勢だからこそひきこもりが強化されるという珍事が発生しております。今回の大震災に対する「大丈夫くん」と「現実くん」が壮絶なバトルをくりひろげておりますが、残念ながら「現実くん」が優勢です。ただでさえ望み薄だったBIはさらに遠のいたと思いますし、日本政府としてもひきこもりまで気にする余裕はなくなってくるのではないかと思います。被災者の方々のことや社会全体のことを考えればいたしかたないところです。こうなればもう自宅待機命令を自分が住んでいるところにまで自主的に拡大せざるを得ません。

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