神に試されている

 信仰心なぞゼロの人間だが、これは神に試されているんだなと思う時がある。甥っ子だ。叔父さんお相撲しようよ、いくようー、はっけよいのこった、それーい、
「うわあああぁ」
 甥っ子がボクの足に噛みついた。いかがなものか。

 怒るぞ、たたくぞお、きちんと躾をするぞ、という気持ちを打ち消すように、ボクの心に神がそっとささやく。試されているんだ、精進せよと。甥っ子に試されているのではなく、神に試されいるのだと気づいた。相撲で足を噛まれる…、神の試練以外の何物でもない。危うく堕落し、つまらない小さい人間になるところだった。

 神の存在を感じ朗らかな気分でボクと甥っ子は何番も相撲をとった。相撲にもいろんな技があって結構じゃないか。でも最後は甥っ子を寄り倒して泣かすというおなじみの展開。叔父さんの精進は続く。

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