ひきこもり空母

 ひきこもり作業所に通い始めてもう3年以上たつ。完全に作業所の主である。職員の人も親切で、親しい仲間もでき快適だ。「80歳までここにいたい」。あいや、それはいかがなものかと。

 ひきこもり作業所が作られた目的はボクのような人間を社会参加、社会復帰させるためだ。ボクがこの作業所生活を満喫し続けると、社会復帰にくその役にも立たないだめ作業所、ボク自身が失敗作業所であるという証明になってしまう。つまりボクみたいなのがたくさんいるというのは、治らない患者であふれている病院と同じなのだ。

 就職させた人数が作業所の優越を決める。知っているところでは7人が就労についたという。その作業所の所長は毎日が講演会だ、そこで成功の黄金律を語る。短期間で就労させる、これが価値のある作業所。人気もある。仕事につきたい人たちがたくさん集まる、その中から若くて就職できそうな人だけを選んで作業所のメンバーとして入れる、更に就労率が高まる、価値人気が上がる。東大合格者をたくさん出している進学塾のようだと思ってもらいたい。

 全然だめだ。そんなものは認めない。ひきこもりその他もろもろに関して作業所だけでなく、自助団体やらフリースペースやらいろいろあるが全ての支援組織は「ひきこもり空母」であるべきだ。ひきこもり空母理論。

 やあ、ひきこもりニートそして自慢できない脛に疵を持つ人たちよ、君たちは戦闘機だ。ちっちゃなプロペラ式の戦闘機だと思ってもらいたい。毎日一大決心をするはずさ、働こう、バイトしよう、契約社員になろう、正社員になりたいそう思って滑走路を飛び立つプロペラ式の戦闘機なんだ。結果はおなじみの戦地につく前に燃料切れで墜落だ。戦地という名の職場にたどり着く前に墜落だ。奇跡的に戦地にたどり着いたとしてもすでに燃料はつき、動力のないグライダーのように緩やかに落下するだけ、戦闘(仕事)どころではない。なぜなのか。

 爆撃機じゃないからだ。戦地へひとっとび爆撃をして帰ってくる、そんなのは無理だ。そこで必要となるのがひきこもり空母だ。社会参加、社会復帰のための戦略拠点。とても無理な距離を、可能な距離のところまで運んでくれるひきこもり空母の出番だ。旧型のプロペラ式のひきこもり戦闘機である君(&ボク)は、ひきこもり空母の上でじっと待機、そして自分がよしと思ったところで空母から飛び立てばよい。

 燃料たっぷりで空母から飛び立っていった戦闘機たち。でもひきこもり空母が活躍するのはこれからです。おやおやさっき飛び立ったばかりのひきこもり戦闘機たちがわらわらと空母に引き返してくるではありませんか。なぜなのか。一言でいえば敵が強すぎた。学校、会社という名の敵軍隊あまりに強力で、なすすべなく撤退してきたのです。傷ついたひきこもり戦闘機を収容するのも大事なひきこもり空母の役割。一番大事な役割だ。ここが滑走路と空母の違いなのだ。この辺を分かっていない作業所はひきこもり空母失格である。飛び立った戦闘機を回収、燃料補給、修理、休養を与える、この役割りこそ肝、ここをしっかりやって初めて社会参加・社会復帰の戦略拠点となりうるのだ。

 優秀で価値がある作業所等は、戦いは勝つ、最後には必ず勝つという考えで運営されているのでひきこもり空母としての役割りを果たしていない。傷ついても戦地にすぐに復帰するという条件つきでしか、空母への着艦を許可しない。もうこうなるときつ過ぎてこっそりとばれないように逃げるしかない。ジェンキンス氏ばりの脱走兵になるしかない。見事社会復帰を果たした英雄ほど、うまくいかなくなった時に行き場がどこにもなくなる。戦略拠点は慎重に選ぶべきだ、そして複数の戦略拠点を持つべきだ。自由にいつでも着陸できる場をたくさん作ること、それが旧式ひきこもり型プロペラ戦闘機の正しい飛び方さ。300pxuss_nimitz_1997_1

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