【いがみ合い2018】寝たきり老婆 vs ひきこもり

 寝たきり要介護5の老婆ママンといがみ合ってしまいました。いまわのきわまで来ている老婆相手にいがみ合える人間もそうそういないでしょう。かわいそう、気の毒と思えば、なかなかクワッとなれるものではありません。

 事件の発端はヨドバシカメラにあります。小学生の甥っ子次男坊とヨドバシカメラに買い物にいくことになりました、その時です。寝たきり老婆ママンが、iPadのケースが欲しいと言い出したのです。両手の動かない老婆にもとって、iPadは飾りでしかありませんでしたが、老婆のけなげさに同情し、甥っ子と私はおつかいとして、そのケースを買ってくることになりました。それが悲劇の始まりです。

ipad

 ヨドバシカメラの売り場に行くと、iPadのケースが三種類くらいあるのです。どれにすればいいのか、頼まれたメモには、縦○○センチ、横○○センチとあるだけで、型番とかそういうのは書いていない。こんな雑なiPad情報で、はたして正しいケースが買えるだろうか…、悪い予感がしましたが、まあだいたいこんな大きさだろうというものを買って帰りました。

 それが間違いだったのです。いざ家で使ってみようとすると、ケースが小さすぎてiPadがはいらないのです。4000円くらいしたのに、無駄になってしまった。どうしよう、店に返品して別のに交換してもらおうか、それともヤフオクかメルカリで売ってしまおうか、そんなことを考えながら、甥っ子と黒ひげ危機一発をして遊んでいました。すると、なにやらうめき声のようなものが、ベッドから聞こえてくるのです。

 「謝れ!」「ヨドバシで取り替えてこい!」、寝たきりママンがベッドの上から、憎々しげに我々を叱咤しているのです。あれ、おかしいな、幻聴かな、と苦笑いでやりすごし、私は甥っ子と黒ひげ危機一発を続けました。

 「ゲームするな!」「いますぐヨドバシに行け!」と、今度ははっきりとした、病みしゃがれた罵声が聞こえてきました。ふだん老婆は病気のせいか舌がまわらず、ハッキリと話せないのですが、どういうわけか、治ったのかと思うくらい、ハッキリとした口調で罵倒してくるのです。

 「ヨドバシィィ! ヨドバシィ!」と、寝たきりママンの呪詛がとまりません。羊の皮をかぶった羊と言われている私も、さすがに堪忍袋の尾が切れてしまい、家族だけが知っている裏の姿、ひきこもり阿修羅王になってしまったのです。部屋から財布を取ってくると、4000円をババアに返し、あれは俺が買ってきたものだ、お前は1円も払ってないんだから文句言うなと、まあそんなようなことを寝たきりママンに言ったのです。

 寝たきり老人と高齢ひきこもりの地獄のいがみ合い。あのシーンを思い出すたびに、心が寒々としてきます。甥っ子のトラウマになってしまったのではないかと、深く反省しております。

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