2020-05-29

よもやま話

書評『回想の太宰治』

津島美知子『回想の太宰治』がおもしろい。内容を一言でいうなら、太宰おちょこ伝です。  その前に、読書人たるもの、作家の書いた小説を読むべきです。作家がどういう人だったとか、作品の舞台裏とか、そんなことは関係ないはず。が、作家が故人であると、もう新しいものを読むことはできないわけで、ファンとしてはこういう回想録に手をだしてしまうのもしかたがないこと、と言い訳をしておきます。  太宰の本妻が書いただけあって、しみじみと太宰の器の小ささを後世に伝える、いい逸話がたくさん書いてあります。そのなかで、私の心にいちばん響いたのが、太宰の〝ケチっぷり〟です。  太宰は小説のなかで、自分は吝嗇だ、ケチだという...